「忘れられない一文」平元文雄

「忘れられない一文」平元文雄

 今回はサッカーの話ではありません。でも、よければ読んでいただけると嬉しいです。もう三十年も前になるでしょうか。ある一冊の本で語られた言葉が忘れられません。それは当時、愛知県心身障害者コロニーこばと学園の園長をなさっていた岡田喜篤さんの文章です。施設に勤めたこともない、言わば門外漢の私ですが、この文章を読んでとても感動したのを覚えています。誠に僭越ではありますが、この紙面で紹介させていただこうと思います。どうかお許しください。


 私たちはすべての人が等しく尊重されるべきである。という理念に基づいて、社会福祉の営みを支えているのだと思います。すべての人を大切にするとは、最も弱い人、最も苦しい人に、人間的な心くばりをなすことだと思います。そのために、私たちはいま、重症心身障害児を人として大切にする作業を、社会の人びとの信託のもとに委ねられているのだと思っています。

 その信託に応えて、重症心身障害児を、具体的に尊重する知識・技術・人間観といったものを生み出すところ、それが重症心身障害児施設でなければならないと信じています。大変難しいことではありますが、そのような成果を、少しでもあげることができれば、私たちの社会が、それだけ人間を大切にするということに進歩を示したことになる、と心秘かに自負している次第です。

全国重症心身障害児(者)を守る会編集「この子たちは生きている」ぶどう社 より―


 「すべての人を大切にすることは、とりもなおさず、最も弱い人や最も苦しい人に人間的な心くばりをなすこと」との一文は私のその後の生活や仕事において、大きな指標となりました。

 今も、週1回ですが、びわこ学園医療福祉センター野洲でボランティア活動を続けています。