「卒団式での挨拶 〜大病を患って〜」平元文雄

　６年生のみなさん、卒団おめでとう！

　最後までよく頑張りましたね。えらいと思います。中学校へ行っても好きなスポーツを続けてください。西内コーチ、金本コーチには随分、お世話になりました。君たちがお酒を飲める年ごろになれば、是非とも二人のコーチとともに、お酒を飲みながら、思い出話に花を咲かせてください。

 

　卒団生の保護者のみなさんへ

　お子さんの卒団おめでとうございます。子どもだけでなく、団の運営を支えていただきありがとうございました。

 

　さて、毎年卒団式には何を話そうかなと悩むのですが、最初、ＯＢのことを話そうと思っていたのですが、お礼の意味も込めて、私の病気のことをお話ししたいと思います。少し長くなりますが聞いてください。

 

　私が大きな病気をしてから丸６年が経ちました。君たちが１年生になる前の年のことでした。病気は脳の血管にできたこぶが破れる「くも膜下出血」と、脳室が大きくなる「水頭症」という病気でした。私は今でも、頭からお腹にかけてチューブが入っており、脳髄液がその中を流れ、おしっこと一緒に排泄しています。
　私は毎年、職場で健康診断を受けていたのですが、悪いところは何一つなく、健康そのものでした。
　でもこの病気になる３日前から頭が痛かったのです。「ノーシン」という頭痛薬を持って職場に行っていました。頭痛３日目、さすがに頭が痛くて、今日は仕事休もうかなと思ったのですが、たまっている仕事もあったので、仕事場に向かいました。おそらくこの時、家で寝ていたら、私はこの場に立っていないと思われます。
　私の仕事場は、君たちがお正月明けに登った三上山のふもとにある第２びわこ学園でした。
　頭痛３日目の午後でした。私は、学園の住棟にあるベッドの上に上がって子どもに関わっていました。その時です。私は意識を失って、ベッドから転がり落ちました。第２びわこ学園は医療施設でもありますから、すぐに看護師さんやお医者さんが、駆けつけてくださり、救急車が来るまでの間、酸素吸入などの救命措置をしてくださいました。
　病院は栗東市の済生会病院でした。主治医の先生は、出血量が多かったので、手術をやめとこうと思われたそうですが、隣におられた先生が、とりあえずやってみようということで、私は手術を受けることになりました。
　その夜、私の妻、親、兄弟は、主治医から病状の説明報告を受けました。その中で、「最悪の事態も考えておいてください」との話もあったようです。
　しかし奇跡的に、その後、私の意識は回復しました。そして、その後４か月の入院生活を送ることなります。

 

　入院生活の中で私を励ましてくれた三つのことを述べたいと思います。

 

　一つ目は田中さんという患者さんでした。この人は自分で食事をすることもままならないのですが、自分が食事を食べ終わると、他の患者さんの食事のお手伝いをされるのです。私はすごい人がおられるんだと思いました。

 

　二つ目は宮脇さんです。この人は左の手が動かなかったと思います。いつも６時ごろに起きて、病棟の廊下についている手すりを右手で持って、前に行ったり後ろへ下がったりと歩行の練習をされるのです。私がたまたまその現場にさしかかった時、宮脇さんが言われた言葉は、「平元さんなぁ、歩けるということは、とても嬉しいことやで」という言葉でした。

 

　そして三つ目は菩提寺サッカースポー ツ少年団からの励ましでした。
　今日持ってきたのですが、一つは千羽鶴（当時の団員、保護者、指導者がおってくださいました）です。余談になりますが、私は病院で鶴の数を数えました。千羽鶴って鶴をたくさん折っていることかなと思っていたのですが、きっかり１０００羽ありました。
　団からはもう一つ、子どもたちのメッセージが入ったボールをいただきました。このボールは本来、病室に飾っておくものなのですが、私は元気になってくると、このボールをリハビリに使いました。
朝、ペンデルボールのようにして、誰も歩かない病棟の廊下を歩きながらボールを蹴りました。一周目、右インステップキック。二周目、左インステップキック。 三周目、右インサイドキックといった具合に。
　私はこれらのリハビリで、倒れた後、全く動かなかった右足も動くようになりました。

 

　今日は卒団式です。
　子どもたちには、「人にやさしく」という言葉を送りました。「決して人をいじめたりしちゃだめだよ」と。

 

　卒団生のお父さん、お母さん、そして指導者のみなさんには、「頭痛が続いたら、脳の病気を疑ってみてください。病院へ行かれることをすすめます」と。

 

　最後に菩提寺サッカースポーツ少年団へは、
　「本当にありがとうございました。こんなに元気になりました。」と。