「ジオゴくんの涙」平元文雄

 前回、「三郎ちゃんごめんね」を書きながら、ジオゴくんの涙を思い浮かべていました。

 先日、U-12後期リーグの最終戦で大原戦がありました。この日の2試合に勝利すれば、ほぼ県大会出場を手中にできるという大事な試合でした。

 ジオゴくん、性格も素直で、仲間からも、大人たちからも好かれています。お父さんやお母さんも熱心に試合の応援に来てくださります。よく試合中、お母さんが出されている「頑張れー」という声は、きっとグラウンドにいる選手だけでなく、ベンチにいる選手にも、きっと届いているに違いありません。

 最終の大原戦、彼はベンチスタートでした。でも、コーチからいつでも交替できるようにとアップの要請を受けて、何度もアップしていました。ゲーム内容が緊迫していることもあって、彼にその試合は出場の声はかかりませんでした。

 チームとしては3-1という逆転勝ちで勝利し、県大会出場を決めました。試合が終わった後、一人泣いている子がいました。ジオゴくんでした。

 私は勝ったのに泣いているのはなぜかなと不思議に思いました。後で聞いてみると、試合で使ってもらえると思ってスタンバイしていたのに、使ってもらえなくて悔しかった、とのことでした。

 ここまで試合に真摯に向き合っている子は少ないです。その涙はその思いをあらわしているように思いました。

 私は今まで社会人チームやスポーツ少年団で、コーチや監督をしてきました。社会人で監督をしていたころに、残り10分ぐらいの時に交替させた選手に、「監督、無理して使わないでください。それやったらベンチで応援していますから」と言われたことがあります。その選手は監督の温情で使ってもらったと思ったのでしょうね。ー年前に「選手起用」の中で書きました。

 スポ少の選手起用も難しいです。

「勝ちたい」という思いと、「育てたい」という思いが交錯するからです。特に大事な試合はそうです。

私のコーチ時代は、どの試合も前半、後半入れ替えてメンバーを起用しました。でも勝ちたかったから、3,4人の中心メンバーは前・後半、トータルで使いました。なかなか勝てず、ある保護者からは、「平元さん、たまにはベストメンバーで試合をして」と言われたこともありました。

「ベストメンバー?」

保護者もやっぱり目が肥えてくるんですね。勝つためにはという思いが強くなり、子どもたちをランク付けしてみてしまうのでしょうね。

 試合の出場メンバーを決めるのを練習試合などは子どもたちに決めさせることがあります。しかし、大きな試合の場合には、やっぱり、その子らの練習を見ているコーチが決めます。まさに演劇や芝居の演出家のようです。

 私も中心選手を前(FW)で使うのか、真ん中(MF)で使うのか、後ろ(DF)で使うのかよく迷ったものです。試合の前日の夜に、あれこれ思案するのです。こうして考えるのが楽しいのです。私の経験から言いますと、相手の戦力に対応すべく、中心選手のポジションをいろいろ変えましたが、やっぱり、いつも練習でしているポジションの方がいい結果が得られることが多かったように思います。

それで精一杯やって負けたら仕方がないと割り切るようになりました。

 今回ジオゴくんの涙の中には、「試合に出たかった」という思いがありありと伝わりました。

 でも、コーチもいろいろ考えながらの采配だったと思うのです。子どもだけに、「そういう経験を経て人間は強くなる」という言い方はしたくないものです。

 試合後、ジオゴくんだけでなく、出られなかった何人かの子どもたちに、コーチが、「出せなくてごめんな」と言葉がけをしていたと聞いて、それでよかったなと思いました。

「三郎ちゃんごめんな」の三浦さんではないけれど、子どもたちに真摯に向き合ったんだから・・・。

 今年の6年生は本当に仲の良い集団です。お昼をとっている光景を見ていますとわかります。

いつもなら、県大会につながる県選手権大会や全日のブロック予選は下学年から6年生にあげるのですが、今回は見送りました。

 6年生の全日県大会での活躍を期待したいと思います。


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コメント: 1
  • #1

    藤田コーチ (木曜日, 08 10月 2015 20:32)

    試合終了の時、彼の涙を丁度みました。
    これまで県大会出場を決めた時は、いつも選手達とハイタッチをしていましたが、今回は止めました。
    それは、彼の涙があまりに素晴らしかったからです。是非、県大会でも試合に出場できるよう、これからも益々磨いて下さいね。