「お尻にフィットするサドル」平元文雄

「お尻にフィットするサドル」平元文雄

 昨年2月にこのコーナーで菩提寺SSSのOBのHくんが大学卒業時、就職内定をけって「自分さがしの旅」と銘打って2年間オーストラリアに行った話をしました。(子どもへの信頼)

 前回、「サケが森をつくる」の中で、写真家、探検家の星野道夫さんの話をしたら、山川コーチは、星野さんの著書「旅をする木」は自分の人格形成に大きな影響を与えた本だとコメントを寄せてくれました。1冊の本がその人の人生に大きな影響を与えることもあるのです。山川コーチが今でも時間を見つけて東南アジアに旅するのはこの本の影響も大きいのではと思っています。

 さて、私にも力をもらった旅の経験があります。少し自慢話みたいで恐縮するのですが、聞いてください。
 
 大学時代のことです。私は寮生活をしました。
 寮の自転車置き場にほとんど使わずに置いてあったサイクリング車がありました。私と同じサッカー部の友人のものでした。
 その自転車を借りて、まず、びわこ一周をしました。びわこの周りを走る道路はフラットが多く、湖上を横切る風を受けながら走るのは、とても気持ちが良かったという記憶が残っています。
 それがきっかけとなって、その後、紀伊半島一周、下関までの山陰路、2週間かけての四国一周、その他、山陽道や北陸道も少しでしたが走りました。

 いつも友人の自転車ばかり借りるわけにはいきません。アルバイトしてためたお金で輪行車(よくテレビの「こころ旅」で火野正平さんが使っていますが自転車部品をばらしたり組み立てたりする自転車です)を購入しました。
 輪行車を買ったおかげで、目的地まで行って戻る必要はなくなり、半分の日程でいろんなところに出かけることができました。
 大学時代、長期休暇があるといっても、サッカー部に入っていたので、練習や遠征もあり、時間をあまり生み出せなかったのですが、サイクリングの魅力にとりつかれてしまいました。

 友人のサイクリング車は3段変速でした。今は10段変速とか24段変速とかいろいろ出ていますが、そんなに多くなくても私は3段変速あれば十分だと思います。前輪と後輪のギア比の最低と最高は一緒だと思いますから・・・。

 兵庫県北部の居組で見たきれいな海、愛媛県内子町のきれいな街並み、福井県東尋坊のぞっとするような絶壁、いろんな場所が思い出されます。

 一日の走行距離は、ただ走るだけでなく、寄り道もしますから100kmがいいところでしょう。夏は日が長いのでプラスアルファできますが、日が短い冬場は無理だったような気がします。
 嫌な思い出もありました。宿泊地に到着したと思ったら、地図の読み違いで、その日の宿泊地はまだ20kmも先だったということもありました。もう日は暮れていましたし、重い足でペダルをこいだのを思い出します。

 当時は舗装していなかった道路もありました。県道を走ると県境の標識を境にA県側は舗装している、B県側は未舗装ということもよくあり、それぞれの県の財政事情も垣間見ることができました。

  一日の平均時速を出しますと、信号待ちもあるので、大体、18kmぐらいでした。

 それからサイクリングの思い出としては峠越えがあります。荷坂峠だったでしょうか。三重県の紀伊長島から松阪に向かう峠で、頂上が山の高いところに見えるのです。上りはとにかく自転車から降りないこと、蛇行しないことに心がけました。ゆっくりゆっくり上がるのです。必ず、上りは汗が出ます。私はよくペダルをこぐ回数を数えながら走りました。押して上がった方が速いぐらいのスピードでしたが、絶対に降りませんでした。逆に下りは急なところでは時速60kmぐらいのスピードが出るのです。小石一つでも拾うと、跳ねたり、パンクしたりすることもあるので注意が必要でした。

 最後に、よく自転車に乗るとお尻が痛くなることがあります。サイクリング車のサドルは硬くて、小さいからよけいにです。でも不思議なことに、長い距離を走るとその痛みがなくなってくるのです。お尻がサドルにフィットしてくるのです。これも大きな経験でした。

 長々と力をもらった旅の話をしました。
 若い人には時間を見つけて旅をしてほしいと思います。できたら一人旅を!!


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コメント: 1
  • #1

    山川 (金曜日, 27 1月 2017 21:05)

    一人旅だからこその出会いがありますね。不思議な縁を感じながら、出会って別れて。現地の人と仲良くなって家にお邪魔したこともあれば、怪しさを感じて避けたこともあり。もう2度と会えないかもしれないけれど、出会えて良かったと思う人たちがたくさんいます。出会いの不思議。